第一章



「餓鬼のくせに無茶をしやがる」

飛び移って早々、ウルフに睨み付けられてルーティは苦笑を浮かべた。

そして左翼に移動し、ダークピカチュウと向き合う。ルーティはもう一度、真偽を確かめる為にその名を口にする。

「――スピカ」

ぴくり、と一瞬だけダークピカチュウの眉が動いた……ような気がした。

結局、ダークピカチュウは何も答えないまま左翼に移動して。

様子を見守っていたダークウルフ、ダークフォックス、ダークファルコの三人はそれぞれのウルフェンとアーウィンを方向転換させると、瞬時に飛び去ってしまった。


「へっ、つまんねえ連中だぜ」

ウルフェンの無線から聞こえてきた余裕綽々の声の犯人は、ファルコである。

といっても、ルーティにとって彼は、ウルフに“かっこつけのフォックスのパートナー”と聞かされただけなのだが。
 
 
33/42ページ
スキ