第一章



「何で……」

ルーティが疑問を抱くのも仕方ない。

先程まで敵対していたダークシャドウを率いて、彼は立ち退こうとしているのだ。

「勘違いするな」

ぼけっと見つめてくるルーティを、ダークピカチュウは鋭く睨み付けて。

「今日はただの下調べ。それに、ターゲットに初見で死なれたらつまらないからな」

彼の言うターゲットとは恐らく、ダークフォックスならフォックス、ダークウルフならウルフといった具合に、同じ姿のX部隊の戦士を指し示すのだろう。

――それにしても似ていない。彼には他と違った個性があるし、声も、容姿もルーティとは全く異なっている。

「殺されたいのか! 早く行け!」

声を荒げたのはダークウルフである。

ルーティは慌てて頷くと、助走をつけてダークウルフのウルフェンの先端から、ウルフのウルフェンの先端へと飛び移った。
 
 
32/42ページ
スキ