第一章
「何で……」
ルーティが疑問を抱くのも仕方ない。
先程まで敵対していたダークシャドウを率いて、彼は立ち退こうとしているのだ。
「勘違いするな」
ぼけっと見つめてくるルーティを、ダークピカチュウは鋭く睨み付けて。
「今日はただの下調べ。それに、ターゲットに初見で死なれたらつまらないからな」
彼の言うターゲットとは恐らく、ダークフォックスならフォックス、ダークウルフならウルフといった具合に、同じ姿のX部隊の戦士を指し示すのだろう。
――それにしても似ていない。彼には他と違った個性があるし、声も、容姿もルーティとは全く異なっている。
「殺されたいのか! 早く行け!」
声を荒げたのはダークウルフである。
ルーティは慌てて頷くと、助走をつけてダークウルフのウルフェンの先端から、ウルフのウルフェンの先端へと飛び移った。