第一章
その名を呼んだ瞬間、少年ははっと目を見開いた。しかし、頭に痛みが走ったのかよろめき、コックピットに凭れ掛かる。
「……いや、違う。気付いた時にはダークピカチュウと呼ばれていたんだ。俺は、スピカなんて名前じゃない」
少年、ダークピカチュウはそう言うが、ルーティはその顔を確かに知っていたのだ。
見間違えるはずがない。
「君はスピカだよ! ピチカという可愛い妹がいてっ……いつも一緒だった! 記憶を失っているだけなんだよ!」
ルーティは語気を強めて言い張ってみたが、遂にダークピカチュウは頭を抱えて座り込んでしまった。
「リーダーに触るな!」
心配して触れようとしたその時、乗っかっているウルフェンを操縦している、ダークウルフが怒鳴り声を上げて。
どうやらスピカ、じゃないダークピカチュウがダークシャドウというチームのリーダーを勤めているらしい。
――それにしても、このダークウルフは、本物とは似ても似つかないな。