第一章
意識を飛ばすまいと、ダークフォックスは機体を激しく揺さぶる。ずるっ、と手が滑り、遂にルーティは振り落とされた。
「あっ」
小さく声を洩らす。
――馬鹿やったけど、これで戦況は変わるはず。思えば散々な人生だったなあ。
パシッ
その時、ルーティの左手は何者かによって掴まれ、墜落を免れた。
反射的に瞑っていた瞼をゆっくりと開き、見上げる。そこにいたのは、先程まで対峙していた、漆黒の稲妻を放てる少年。
「リーダー、何でそいつを?」
少年はルーティを左翼の上に引き上げると、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
――所々が跳ね上がった金髪に、黒い瞳。ルーティには何処か見覚えがあった。
あれは確か、十年前に忽然と姿を消した、ピチカの兄で幼馴染みの……
「スピ、カ……?」