第八章
スピカはそっとルーティの体を離すと、まだ少しふらつきながらも立ち上がった。
彼が見つめる先には、スピカは死んでしまったのだと勝手に錯覚してフォックスの腕の中で泣きじゃくっているピチカ。
「ピチカ。顔を上げて」
フォックスが背中を優しく叩くと、ピチカはようやく振り向いた。涙を拭い、そこに立つスピカの姿を捉えて。
「ピチカ」
「にぃに……っ」
スピカが名を呼ぶと、ピチカはぎこちなく笑いながらぽろぽろと涙を溢して。
スピカはピチカの元へと勢いよく駆け出す。そして地面を軽く蹴り、飛び上がると。
「俺の可愛い妹に気安く触ってんじゃねえええ!」
叫び声と共にフォックスを蹴り飛ばしたのだ。当然、辺りに沈黙が訪れるわけで。
スピカは満足げに額の汗を手の甲で拭うと、今一度「ピチカ!」と呼んでは満面の笑みで振り返り、ガバッと抱きついて。