第八章
「スピカ……?」
ユウが手を離すと、代わりにスピカはゆっくりと瞼を開いた。心配そうに覗き込む、ルーティの姿を真っ先に捉えて。
スピカは自分で己の上体を起こしたが、ルーティは身を案じて支えながら。
「大丈夫?」
スピカは己の胸に手を添えると一旦瞼を瞑り、また開くとルーティを見つめて。
「……ルー」
ぽつりと聞き覚えのある名を呼んだ。
それは彼がいなくなってしまう直前まで、ルーティがスピカに呼ばれていたあだ名。
「スピカ……もしかして」
ルーティははっと目を見開いた。
スピカは頷き、微笑を浮かべてはルーティの手を取り、己の胸に添える。
「ずっと、探してた」
手を伸ばしても届かなかった光を。何度も自分の名を呼んでくれた、その人物を。
それは今、この胸の中に。
「やっと……届いた」
スピカは嬉しそうな笑みを浮かべると、ルーティに腕を回し抱きついて。
「遅れて……ごめんな。ただいま」
「うん……お帰り、スピカ」