第八章



――また、いつもの夢だ。

真っ暗な世界の中、少年は海と思われる場所で膝下まで浸かっては立っていた。

辺りを見回したところで陸は見つからず、ただ、とぼとぼと宛てもなく歩き出して。

――何処に行けばいい?

その時、自分の後ろで何かが光った気がして、振り返る。しかし、こうして浸かっていては歩きにくく、間に合わないわけで。

――こんな真っ暗な世界で独りぼっちだなんて、これが絶望ってヤツなのかな。

少年は一人、嘲笑した。


「スピカ」


名前を呼ばれて、少年は振り返る。

そこには誰もいなかったが、確かにその名前は自分のもの。それがはっきりと分かった今、少年は駆け出していた。

――帰りたい。

「スピカ」

――皆に会いたい。

「スピカ」
「待って!」

声のする方へ夢中で手を伸ばしたその時、光が現れて少年を包み込んだ。


――今度こそ、この手は届いただろうか。
 
 
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