第八章
「ユウ。お前なら出来るんじゃないか?」
ふとフォックスが口を開いた。
ルーティとピチカははっと顔を上げると、共にユウに注目して。しかし、ユウは何も言わないまま目を逸らしてしまい。
「……そうだよ、ユウなら」
――十四年前のあの日、お得意の超能力で僕の記憶を塗り替えた彼なら。
中和させることが出来るかもしれない。
「それは……出来ない」
しかし、ユウの答えは期待を裏切って。
「どうして!」
「私はもう、心理的に超能力は使わないと決めた。それだけのことだ」
ユウの決心は堅かった。
恐らく、十四年前のあの出来事を今も悔やみ、もう二度と同じ過ちを繰り返さない為にも、心に強く誓っているのだろう。
超能力を使って記憶の中和が出来たとしても、目覚めたスピカがそれをどう捉えるかは分からない。それを恐れているのだ。