第八章
「っ……!」
顎を反らしたが掠め、姿を現したのはダークウルフ。瞬時に後退し、掠めた顎にそっと触れてはウルフを睨み付ける。
その瞬間、緑色だったステージの床は紫色へと変色し、巨大なモニターや観客席は消え失せ、辺りの景色は一変。
底の見えない深く暗い穴がステージを囲い、紺碧だった空は青紫色に変わった。
どうやら、ルーティとウルフは幻覚を見せられていたらしい。だから、スピカとダークウルフの姿が見えなかったのだろう。
「勘の鋭い野郎だ」
スピカは小さく舌打ちをすると駆け出し、ウルフの元へ向かったかと思いきや翻すようにバク転をしながら後方に飛び上がり。
狙いはルーティ。再び浮遊した足場の、先程とは反対側に飛び乗り、ルーティ目掛けて振り向き様に腕を薙ぎ払って。
ルーティは咄嗟に腕を片手で受け止め、両手で掴むと内側に引き寄せながら、脇腹に向かって膝蹴りを仕掛ける。