第七章
そういえば、ここにいる誰一人として外傷は無いのだ。ルーティは不審に思って。
「どうも匂うな」
ウルフェンから下りたウルフは、端から話を聞いていたのかそう呟いた。
――エックス邸を亜空間に取り込むだけなら、亜空爆弾を途中で見つけられてしまう可能性を踏まえて、何らかの攻撃を仕掛けて身動きが取れない状態にするはず。
しかし、ここにいる全員が無傷ということは、まだ何か此方に用があるということ。
恐らく、あれはほんの序曲に過ぎないのだろう……と、ルーティは考えたのだ。
「へえ。なぁんだ、来れたんだ」
突如、クレイジーの声が聞こえてきて。
全員が警戒して構えるも、クレイジーの姿はそこには無く。何処から見ているのか、ルーティは辺りを見回して。
「そこからは見えない。俺とクレイジーは、いわゆる監視カメラから見てるからな」
続いて、マスターの声。
ここでこの世界を圧縮でもさせていっぺんに殺してしまおうというわけか。いや、それだけの為にこんなことをするはずない。