第七章
「スピカ!」
ダークウルフが操縦するウルフェンの右翼には、スピカが乗っていた。ルーティはその姿を見るなり、思わず、名を叫んで。
しかし、いつもと様子が違う。
名前を呼べば頭痛が襲っていたというのに、今日のスピカはそうではない。記憶を取り戻したかと思えば、そうでもなく。
「……っは、スピカだと?」
それまで無表情だったスピカは、ニヤリと口角を吊り上げると不適に笑って。
「誰だ? それは」
――違う。スピカだけど、何かが違う。
ルーティが言葉を失っていると、ウルフェンは急旋回して。ルーティはコックピットにしがみつき、再び振り向く。
「やめてよスピカ! なんでいきなり!」
訴えかけるように声を上げるが、スピカは不適な笑みを浮かべたままおもむろに片手を突き出し、漆黒の稲妻を放つ――