第六章



何より、ルーティはマリオとリンクの行方が気掛かりだった。――最後の最後に視界に捉えた、紫色の髪の少年の正体。

彼は何者なのか。


『彼は戻らないと思うよ。だから、君は逃げた方がいい。今なら気付かれないから』

ゲムヲは無表情に戻ると、さらさらとそう書き込んでからルーティに見せた。

ルーティは一旦、俯いて。

「ごめん」

ぽつりと呟き、ルーティは顔を上げると、真剣な眼差しを向けて。

「僕……行くよ。ウルフに会わなくちゃ」

そう言い残して、ルーティは早足で研究室を後にした。左右、だだっ広い廊下が続いている。……どっちが正解なんだろう。

「み、右に見せかけて左っ!」

誰に対するフェイントなのか。

ルーティは独り言を口にして、左の廊下を駆け出していた。何処に向かえばいいのか、それさえも分からないままに。

しかし、間もなく行く手は阻まれた。

何処かで見覚えのある、緑のコートを羽織った男……いや、知っている。彼は初日、エックス邸から出てきたのだから。
 
 
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