第六章
するとゲムヲは何処からかスケッチブックを取り出して、黒ペンで何かを書くと、それを反転させてルーティに見せてきて。
『君は、ラディスの息子?』
――どうして直接言わないんだろう。
疑問に思いつつ頷いていると、ルーティは意識を手放す直前の出来事を思い出して。
「もしかして、君が僕を攫ったの?」
訊ねると、ゲムヲは案外素直に頷いた。
こんな小さな体でよく担いだものだ、とルーティが感心していると、ゲムヲは再び文字を書いては見せてきて。
『どうしてこんな所に来たの?』
それを見て、ルーティは苦笑混じりに。
「パートナーを連れ戻しに来たんだ。ウルフっていうんだけど、知ってる?」
ゲムヲは小首を傾げて、それからスケッチブックのページを捲ると何かを描いていき、それからまたルーティに見せた。
『この人?』
描いていたのはウルフの簡単な似顔絵だった。眼帯だとか、狼の耳だとか……そっくりではないが、よく特徴を捉えている。