第一章
急かされるがままに、ルーティは小型戦闘機のウィング、即ち左翼によじ登る。
上手く座り直す前に、小型戦闘機はふわりと浮かび上がり、発進して。
ルーティはコックピットにしがみつき、落ちないように必死だった。……この人、少しは僕を労ってくれないかな。
「おい、鼠野郎」
そう呼ばれるまで、ルーティは全身で風を感じつつ、ぎゅっと強く瞼を瞑っていた。
ようやく、ゆっくりと瞼を開いては恐る恐るとコックピットから離れ、ルーティは左翼の上に座り直し、辺りを見回す。
「うわぁ……っ」
ルーティは瞳をきらきらと輝かせた。
――目の前に広がっていたのは、晴れ渡った美しい青空。夢の中のように遊泳しているようで、いつの間にか吹き抜けていく風も心地好いものとなっている。