第五章
――壁を破る?
つまり、この世界と亜空間を区切っている壁を破り、出来た穴を通って亜空間に……でも、見えない上に触れられないのに、どうやったら壁を破れるんだろう?
「後は自分で考えろ」
首を捻っているルーティを横目に、ダークウルフはスピカの様子を見ようと部屋の扉を開けて。ふと立ち止まると。
「そういえば……ある人間は、己の声量でワイングラスを粉々にしたそうだ」
ダークウルフはルーティを横目に。
「思っていた以上に、声とは偉大だな」
意味深にそう告げて、部屋の中へ。
ルーティとフォックスは不思議そうに顔を見合せていたが、こっそりと話を聞いていたらしいリムが二人に歩み寄ってきて。
「優しいじゃない、あの人」
リムはぽつりと呟いてはルーティの手を取り、にこりと笑いかけると。
「私なら出来るわ。地下に行きましょう」