第一章
「おにぃ!」
両膝に手を付いて息を弾ませているルーティを見つけるなり、そう呼んで駆け寄ってきたのはピチカだった。
勢いよく飛び付かれ、よろめくルーティ。
「ばかぁ! なかなか来ないから心配だったんだよ! わざわざ頼み込んで、待っててもらってたんだから!」
だから、飛行機が発進してなかったのか。
「分かったから、ピチカ」
ルーティがピチカを引き剥がすと同時に、事態に気付いて駆け寄ってきたのはローナ、シフォン、ネロの三兄妹。
「パートナーはいたのかい?」
手を後ろで組みながら、ローナはルーティの顔を覗き込み、にこりと笑う。
ルーティは苦笑を浮かべながら、まだ名を聞いていない強面の男を見遣って。
「……あれが、かっこよくて」
「優しくて」
「紳士的なお兄様、なのか?」
ローナ、シフォン、ネロの順で口々に告げられ、ルーティは思わず顔を引き攣らせる。――かっこいい、以外は間違いだな。
変なこと言うんじゃなかった。