第五章
ぴたりと笑い合うのを止めて、フォックスとルーティはダークウルフに注目する。
「お前に、言っておきたいことがある」
ダークウルフはルーティだけを見つめて。
「リーダーだが……すぐに返してやることは出来ないんだ」
――ダークピカチュウの正体がスピカなのだと分かれば、それだけでダークシャドウから解放されるものだと思っていた。
だからこそ、ルーティはダークウルフの発言がすぐには理解出来ずに、「なんで?」と怪訝そうに聞き返して。
ダークウルフは困ったような顔で。
「此方が優勢でありながらX部隊は一人残らず生きているし、その上、リーダーをここに残して帰れば、マスターとクレイジーは裏切りを悟って我々を殺すはずだ」
フォックスが口を挟んだ。
「人質として捕らえられてしまった、ということにしたらどうだ?」
しかし、ダークウルフは首を横に振って。
「真実を知った今のリーダーに、敵意は無い。そんなのはダークシャドウ以外の誰かが調べに来た時点でバレてしまう」
そして、溜め息混じりに。
「そうなれば、やはりマスターとクレイジーは我々を殺すだろう。……もちろん、リーダーだって無事じゃ済まされない。それだけは避けたいから言っているんだ」