第五章
「そこには……マスターが、いて……」
記憶を遡るほどに頭痛は酷くなり、やむを得ず、中断。スピカは力無くベッドの上に横たわってしまった。
ピチカは心配そうに顔を覗き込む。すると、スピカはおもむろに手を伸ばして。
「ピチカ……」
スピカはそっとピチカの頬に触れて。
「思い出せなくて……ごめんな……」
そう呟いて、意識を失ってしまった。
ピチカは涙目になってルーティを振り返る。心配ないよ、とルーティはぽんとピチカの肩の上に手を置き、微笑む。
「話は終わったのか」
いつの間にか部屋の中に入ってきていたダークウルフが、腕を組みながら二人を見つめて。ルーティはベッドから下りると。
「暫く、二人きりにしてあげて」
こっそりとそう告げて、素直に頷くダークウルフと共に部屋を後にする。