第五章
エックス邸内、ピチカとリムの部屋。
……といっても、リムは気を遣って席を外していて、室内のベッドの上に腰かけているのはルーティ、スピカ、ピチカの三人。
「懐かしいなぁ」
沈黙を破るように、ぽつりとルーティが呟いた。スピカは顔を上げて。
「スピカ」
ルーティはただ黙りこくっているスピカに、ピチカに聞こえないよう耳打ちをして。
「まだ思い出せない?」
――ダークシャドウ一同だけでなく、X部隊の一部の人間でさえ、彼はスピカであると答えたのだから、間違いはない。
しかし、当時は試作段階だったとはいえ、タブーの放つ特殊な波動を彼はまともに受けてしまっているのだ。
名前を何処かで覚えている辺り、“ゼロ”にはなっていないがそれに近い。
「……すまない」
申し訳なさそうに答えて、スピカは再び俯いた。ルーティは困り果ててしまい。