第五章
ダークピカチュウにも幾つか思い当たる節はあったのだが、言い出せなかった。
言い出せない程に、彼らとの時間が……
「確信を持ったのは、彼が貴方をそう呼んだから。それまではただの可能性」
ルーティはようやく気付いた。
――そうだったんだ。だから、彼はあの時、僕を外に逃がしたんだ。
「だからって攻撃をやめる必要は」
「あるんです」
ダークウルフは和やかな表情になって。
「それは、彼が……ルーティが貴方の、大切な人だったから。きっと普通に生きていれば、一番“守りたい”と思った人。だから、彼だけは手出しが出来なかった」
そして溜め息を洩らし、苦笑混じりに。
「例外もいましたけどね」
ダークリンクがぷいと顔を背けると、ダークピットはへらへらと笑いながら肘で小突いて。ダークリンク、小さく舌打ち。
「じゃあ」
ダークピカチュウはまだよく分からない、といった様子で見上げながら。
「お前らは、ルーティ一人の為に……この状況下で攻撃をやめたってのか?」