第五章



「何で……」

ただ、呆然と呟くダークピカチュウ。

ルーティは体勢を整えると、短く息を吐き出しては額に滲んだ汗(或いはただの雨の雫だったかもしれない)を、手の甲で拭った。

「リーダー。それが真実なんです」

ダークウルフはダークピカチュウに歩み寄ると、ぽんと肩の上に手を置いて。

「真実って」

怪訝そうに振り向くダークピカチュウ。

「……彼が最初から言っていたように、貴方はダークピカチュウではなくスピカ。本当はダークシャドウではない、ただの少年なんですよ。貴方も」

ダークウルフはひと呼吸置いて。

「気付いていたはずです」

暫しの沈黙。

あれだけ酷かった雨も今はしとしとと降り注いでいて、それでも十分喧しかった。

「ダークシャドウに共通して備え付けられた能力、変幻。それが貴方には使えなかった。いや、それよりも、いつまで太陽光に当てられたところで何の変哲も無かったのが、一番の証拠。違いますか?」
 
 
16/37ページ
スキ