第五章
「何で……」
ただ、呆然と呟くダークピカチュウ。
ルーティは体勢を整えると、短く息を吐き出しては額に滲んだ汗(或いはただの雨の雫だったかもしれない)を、手の甲で拭った。
「リーダー。それが真実なんです」
ダークウルフはダークピカチュウに歩み寄ると、ぽんと肩の上に手を置いて。
「真実って」
怪訝そうに振り向くダークピカチュウ。
「……彼が最初から言っていたように、貴方はダークピカチュウではなくスピカ。本当はダークシャドウではない、ただの少年なんですよ。貴方も」
ダークウルフはひと呼吸置いて。
「気付いていたはずです」
暫しの沈黙。
あれだけ酷かった雨も今はしとしとと降り注いでいて、それでも十分喧しかった。
「ダークシャドウに共通して備え付けられた能力、変幻。それが貴方には使えなかった。いや、それよりも、いつまで太陽光に当てられたところで何の変哲も無かったのが、一番の証拠。違いますか?」