第五章
◆第五章『大切なモノの為に』
――悔しかったんだ。
大好きな父さんが死んだという事実を隠されていたことが、まるで、お前は真実を知れば、無鉄砲に戦場に飛び出して、ただ殺されるだけ……そう言われてる気がして。
父親の死を受け入れられない、弱い人間だと決めつけられてる気がして。
「はあっ、はあっ……」
息を弾ませ、それでもルーティは走っていた。行く宛てもなく、ただ、森の中を。
「あっ」
木の根っこに躓き、ルーティは転けてしまい。そこがちょうど泥濘だったので、ルーティは全身泥まみれになって。
ゆっくりと体を起こし、ぽろぽろと溢れてくる涙を腕で拭い、独り言を呟く。
「僕……戦士になんかならなきゃよ」
言いかけて、ルーティの腕は何者かによって掴まれ、立たされる。そのまま、引っ張られるがままに木の後ろに追い遣られて。