第一章
次の瞬間、強面の男は回し蹴りを仕掛けてきた。咄嗟にルーティは身を屈めて交わし、後ろに下がって距離を取る。
「あ、もしかして遅かったかな?」
電話の相手はくすくすと笑みを溢していたが、ルーティはそれどころではなく。
次々と強面の男の蹴りが飛んでくる。交わしながら後退していると、やがて追い詰められ、ルーティの背は木の幹に当たり。
「お、おそ、お……ひえっ!」
気付いた時には、強面の男は右腕を振り下ろしていた。短い悲鳴を上げて、ルーティは素早くその場を離れる。
斬撃。強面の男の引っ掻き攻撃により、木の幹には深い爪痕が残された。
――何で出来てるんだ、あの爪!
「何か、ヤバそうだね?」
音で分かるのか、電話の相手は心配そうだ。答える間もなく、電話の相手に分かるはずもないが、ルーティはただ頷いて。