第一章



次の瞬間、強面の男は回し蹴りを仕掛けてきた。咄嗟にルーティは身を屈めて交わし、後ろに下がって距離を取る。

「あ、もしかして遅かったかな?」

電話の相手はくすくすと笑みを溢していたが、ルーティはそれどころではなく。

次々と強面の男の蹴りが飛んでくる。交わしながら後退していると、やがて追い詰められ、ルーティの背は木の幹に当たり。

「お、おそ、お……ひえっ!」

気付いた時には、強面の男は右腕を振り下ろしていた。短い悲鳴を上げて、ルーティは素早くその場を離れる。

斬撃。強面の男の引っ掻き攻撃により、木の幹には深い爪痕が残された。


――何で出来てるんだ、あの爪!


「何か、ヤバそうだね?」

音で分かるのか、電話の相手は心配そうだ。答える間もなく、電話の相手に分かるはずもないが、ルーティはただ頷いて。
 
 
8/42ページ
スキ