第四章



場面は切り替わり――見覚えのある部屋の隅っこで、酷く落ち込んだ様子の少年が蹲っている。それはまだ、幼き頃のルーティ。と、静かに部屋の扉が開いて。

「出来るのか?」
「こんなことに使いたくはなかったが」

歩み寄ってきたのはユウである。

ルーティは顔を上げ、己の腫れぼったい目を晒す。ユウは眉を顰めた。ルーティの目の前に来ては屈み、額に手を翳して。

「情けない、良心だ」

ユウの手に薄紫色の光がぼんやりと灯る。

「――最愛の父親が死んだという事実は、お前を戦場に呼び寄せる。そうさせない為に……許せ、ルーティ。お前の記憶を少し、弄らせてもらうぞ」


ぷつんと記憶が途切れた。


現実に引き戻される。

ぽつぽつと雨が降ってきて、同時に、クレイジーはルーティを解放する。再び二人は手を繋ぎ、地面に両膝を付くルーティを見下ろしながら、二人は徒に声を揃える。

「……感想を聞かせてくれる?」


――間もなく、ルーティの悲痛な喚き声が庭に響き渡ったが、雨音に掻き消された。
 
 
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