第四章
「食ら、えっ!」
殴りかかるが右手で拳を受け止められ、しかし、それも計算の内。すぐに身を引いては空中でバク転しつつ飛び上がり、顔の側面目掛けて回し蹴り。
見事命中、ガードが間に合わなかったマスターは数メートル程吹っ飛ばされた。
直後、背後からクレイジーが放った赤い光の玉を数発、食らって前方によろめくルーティ。ぴたり、と体はそこで静止して。
「……よくも、兄さんを」
左手を翳し、超能力か何かでルーティの身動きを取れなくして空中で静止させているのは、クレイジーだった。
怒りを露に呟きながらゆっくりと歩み寄り、目の前まで来たところでくいっと左手を引く。すると、ルーティの体はクレイジーへと無理矢理に引っ張られ、それでも尚、空中で静止していて。
「クレイジー。それやったらつまらないだろ」
口の端から伝う鮮血を右手の甲で拭いながら、マスターは溜め息混じりに告げる。
――まさか。
「手加減……したのっ……?」