第一章



嫌な予感、的中。自分でも顔が引き攣っているのがよく分かった。

ルーティは恐る恐る振り返ると、未だ幹に背を預けている強面の男を見遣り。

「その人って……狼の耳と尻尾が」
「生えてるよ」
「眼帯も」
「してるよ、黒いやつ。左目に」

そんなやり取りをしながら、ルーティは回り込んで強面の男の正面に立った。

……灰色の髪に、白のメッシュ。右目は赤紫色で、左目は黒の眼帯で覆っている。

そして、狼の耳と尻尾。


――この人が、僕のパートナー。


「ルーティ君?」

名前を呼ばれるまで、ルーティはその強面の男をずっと凝視していた。

数秒の間があったので電話の相手も何となく察したのか、苦笑を溢しながら。

「あんまり見ない方がいいよ」

その台詞に、ルーティは頭の上に疑問符を浮かべる。強面の男は、電話を切って携帯を仕舞うところだった。

「その人」

電話の相手は困ったような声音で。

「今、物凄く機嫌が悪いからさ」
 
 
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