第三章
「フォックス?」
ルーティは、目の前に本人がいるわけでもないのに、不思議そうに小首を傾げて。
「頼む……」
フォックスは消え入りそうな声で。
「あまり、無茶をしないでくれ。ルーティに、もしものことがあったら……」
「せや! ルーティ、お前女装したまんまやん! そのまま行くと恥さらしやぞ!」
心配そうなフォックスの声を遮るように、ドンキーの声が無線から聞こえてきて。
その声があまりにも大きかったので、ルーティは思わず、一瞬だがイヤホンを外してしまい。ルーティは溜め息を洩らして。
「分かったってば。でも一応、気になるでしょ。だから、他の人を向かわせてね」
そう告げて、無線を切る。
ちょうどスネークが喫茶店から出てきたので、ルーティはひらひらと手を振りながら駆け寄って。隣に並んだ、その時。
「こらぁ! お前が仕掛けたのか!」
「畜生! 待ちやがれ!」
未だに警備員に追われているウルフが、横切った。一瞬、睨み付けられたような。
ルーティは慌てて追いかける。
「待ってえええ!」
しかし、間もなくルーティは知ることになる。隠されてきた、残酷な真実を――