第一章
トゥルルルル
その着信音は、ルーティがパートナーに電話をかけた直後に、後ろから聞こえてきた。まさか、とルーティは振り返る。
――強面の男の携帯が鳴っていたのだ。
強面の男は携帯の通話ボタンを押し、耳に当てる。ルーティのパートナーが電話に出たのも、同じタイミングだった。
「……も、もしも」
「あ、ルーティ君?」
応答したのは後ろの強面の男ではなく、明るく若々しい声。どうやら強面の男は、別の人と話をしているらしく。
ルーティは安心したように胸に手を当てながら、大きく息を吐き出すと。
「もう、びっくりしましたよ。パンサーさん、なかなか来ないから……代わりに怖い雰囲気の狼男っぽい人が来て、それで」
すると、電話の相手は遮るように。
「ああ、ごめん! 俺、急用が入ったんだよね……だからその人に頼んだんだよ」