第三章
まずは一口。
チョコレートヴィッセ、とやらのケーキを一口サイズに切って、口に頬張る。円やかな甘みが、口の中に広がる。
「んーっ!」
ルーティは幸せそうに頬に手を添え、うっとり。……その姿は少女そのもの。
「あ、食べる?」
ただじっと見ているだけのスネークに気付いて、ルーティはフランシスを一口サイズに切り、フォークに刺して差し出す。
「おいおい」
スネークは周りの視線を気にしていたが、今のスネークとルーティの関係は祖父と孫娘。こういう行動は寧ろ自然だ。
「……貰おう」
小さく笑みを溢して、テーブルから身を乗り出すと、ぱくっ。途端に、程好い酸味がスネークの口の中に広がって。
「旨いじゃないか!」
絶賛。ルーティは「本当!?」と声を上げて、差し出したものと同じ、フランシスを一口、頬張ってみる。
「っ美味しい!」
「なあ、もう一口くれよ!」
「えー!」
――ありふれた、幸せな午後の一時。