第一章
強面の男は辺りを見回しながら聖樹に歩み寄ると、ルーティとは反対側に向かって、同じく幹に背中を預けた。
――うえっ、同じ場所で待ち合わせかぁ。
心の中で、ぽつりと呟く。
強面の男は当然、どうも思わないだろうが、ルーティは落ち着かなかった。何てったって自分は鼠で、相手は狼なのだ。
小腹が空かないことを望むばかりである。
「……来ないなぁ」
しかし、こうも来ないのでは溜め息が洩れる。あれから十五分は経っただろうか。
ルーティのパートナーも、強面の男の待ち人も、一向に現れる気配が無い。
最悪の可能性が脳裏を過り、ルーティは慌てて首を横に振っては考えを振り払って。
……結局、ルーティは確かめるべくポケットから携帯を取り出すと、早速、パートナーの携帯に電話をかけてみた。