第三章



その時だった。

ガレオムにとっての死角。上空から踵落としが炸裂──仕掛けたのはクレイジーである。当然神力も何も込められていないその一撃は自分の位置を知らせるだけの自殺行為でしかない──案の定気付いたガレオムが捕まえるべく大きな掌を伸ばしたが想定内。今度は後頭部に青白い光の球が幾つも撃ち込まれバランスを崩した。木々に身を隠すようにして攻撃を仕掛けたマスターの姿を見つけられる筈もなく気を取られた隙にクレイジーの回し蹴りが打ち込まれる。

うわ、と若干引き気味に声を洩らしている間にガレオムは硝子の双眸に紅の光を迸らせて再度掌を伸ばした。即座クレイジーは指を鳴らすと今度はガレオムの上空へ──後転して逆さまに標的を見据えながら足下に赤い魔方陣を展開。大きな円状の魔方陣の四方に一回り小さな魔方陣が浮かび上がったかと思えば刹那押し広げるように夥しい量の魔方陣が展開、クレイジーの左目が赤の光を灯すのを合図にそれぞれの魔方陣の中心から無数の紫色の光をぼうっと灯したエネルギーの柱が容赦なく降り注いだ。

間髪を入れず舞い上がった砂塵を突き破りミサイルが飛び出す。けれどミサイルは目標に届く前に展開された薄青の防壁によって防がれた。砂塵を振り払うようにガレオムが勢いよく振り向いた先で薄青の髪が風に揺らぐ。口元には薄笑みさえ浮かべて指鉄砲を向けたマスターは人差し指の先から光線を撃つ。光線はガレオムの側面を掠めてその後方へ直線を引く──まさかここにきて計算を誤ったかと焦ったがその筈もなく。拳を引いたガレオムの後方で構えていた透明な硝子の板が受けた光線を今度は斜め上へと真っ直ぐ打ち上げた。その先で待機していたクレイジーは着実に迫るそれを見据えて飛翔による回避を行いつつ冷静に左手を払い反射板を展開する。反射板は受けた光線を吸収するかのように呑み込むと眩い光を解き放って。

気付いたガレオムがふと見上げた頃には遅く。反射板は光線を倍加して放つ。


貫く。


「……!」

凄まじい爆発音が鳴り響いて辺りは硝煙に似た匂いと黒煙に呑み込まれた。鼻に腕を押し当てながら双子を探す。しかし案ずるまでもなく。

彼らは。何食わぬ顔で姿を現す。
 
 
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