第三章



踏み均された獣道を敢えて外れて茂みを掻き分けるようにしながら宛てもなく。此方へ迫ってきているのか否か判別はつかないが遠く捜索用ヘリコプターと思しきプロペラの音を耳にしながら先頭を突き進む双子の背を見つめる。

「神力というのは」

初めに口を開いたのはマスターだった。

「"この世界"で息づく生き物や存在全てから時間をかけて得ていくものだ。加えて魔力とは異なった神力を貯蓄させる為の器が別箇として必要となる。──器は生まれながらにして持ち得るものであって人間やその他動物普通の生き物には備わっていない。俺たちと同様最高位の"神"レベルの存在でもない限りは神力を得る意味など全くもって無いだろうな」

ルーティは成る程、と小さく頷いてみせる。

「じゃあ政府の人たちが目覚めさせようとしている古代兵器にもその神力を貯蓄させるための器があるってことだよね」
「そ。ほんと光の種族だか何だか知らないけどとんでもないもの生み出してくれちゃってさ。こっちはいいメーワクだっての」

苦笑いを浮かべる。

「その時代ってマスターとクレイジーは」
「起きてたらとっくに潰してる」
「あはは」

でなければ文書に綴られているはずもないか。

「分からないのは国の連中がタブーを利用してまで俺たちを追ってくる理由だろ」

それまで黙っていたスピカが口を開く。

「さっきの話が確かなら俺たちはもう用無しのはずだ」
「神力を得たところでこの世界の主たる権限は得られない」

マスターは一度閉ざした瞼を静かに開いて。

「──俺たちを殺さない限りは」
 
 
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