第一章



……コール音が響く。

「何してるのよ」

次の試合を観戦するつもりなのだろう、リムとシフォンがやって来た。

「憎き悪に戦線布告をするのだ!」
「そりゃあいい!」

えへんと胸を張るローナに便乗するラッシュは本気で受け取った可能性すらあるのが怖い。

「あら。面白くなりそうね」
「冗談じゃないわよ」

そんなやり取りを傍聴しながら。


ぷつりと途切れる。


「スピカ?」

電話には出てくれたようだが。

「聞こえてる?」

何故か妙な雑音ばかりで返事がない。

「す、」
「ごめん」


え?


「どうだった?」

無垢な声が訊ねてくる。

「おにぃ?」
「かけ直してみる」

何もないのなら──そう思ったのにこうも早くフラグ回収なんて冗談やめてよ。様々な事件の情景が脳裏にぱっぱと浮かび上がって口の中が渇く。次にコール音が切れるとルーティはすかさず食ってかかるように口を開いた。

「スピカ!」
「忙しいつってんだろぉぉ!」
 
 
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