第二章



ぽん、と吐き出されるように。

「うわあっ!」

情けない声を上げて地面に飛び込むルーティの頭上から溜め息が聞こえた。

「……お前ほんと賑やかだよな」
「スピカ!」

見れば彼の後ろでダークミュウツーが薄笑みを浮かべながらひらひらと手を振っている。どうやら馳せ参じたのは彼だったらしい。

「悪かったな」
「お役に立てたなら光栄だ」

ダークネスが頭を下げるとダークリュカと軽く視線を交えて空間を歪ませて消失。ダークミュウツーはまた万が一に備えて残るようだった。

「起きませんねぇ」

よいしょ、と抱え直したダークゲムヲが腕の中のクレイジーを見つめた。あれだけ響くほどの音や振動を浴びておきながら未だに目を覚まさないのである。ひょっとすると神力とは彼らの動力源も同義なのだろうか──ただの魔力とは異なる以上どうやって回復を助けたものか。

「……ここは?」

ルーティはふと訊ねた。空間転移を使ってあの場から移動したのだろうとは思うが見渡す限り景色が変わってないかのように窺える。

「白夜の森、だよ」
「! そっか」

ダークミュウツーの回答に安心感。自分だって屋敷からそう離れていないこの森がどうしてもお気に入りで任務を終えた帰りに何度も一人で立ち寄って胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込み景色を堪能して屋敷に戻っていたというのに。何よりもお気に入りなのは森を抜けた先にある崖である。天空大都市レイアーゼの切れ目でもあるその場所からは広大な空と海が見渡せる。いや──大地を、世界を見下ろせるのだ。

「さっきいた森とは反対側だね」
「次はこうは上手くいかないだろうがな」

スピカの発言に小さく頷く。マスターとクレイジーを抱えている限り、タブーは何度でも探し当てて攻撃を仕掛けてくるのだろう。
 
 
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