第二章
バキンッッ──と何かの割れた音がした。どうやら一撃目の波動は防いだらしい。思ったよりあっさりしているような、
「バカ、気を緩めるな!」
波動を相殺した稲妻の失せた背後から。新たな波紋状の波動が打ち出されていて。しまった、なんて気付いた時にはもう。
「、ダーク」
言いかけて息を呑んだ。飛び出してきたダークリンクが盾を構えて波動を受けたのだ。当然のこと防ぎきれるはずもなくダークリンクはルーティ諸共波動によって勢いよく弾き飛ばされてしまう。──先に逃げていたダークロボットとダークゲムヲを追い抜かして。
「うぐッ」
木の幹に衝突したが幸か不幸かダークリンクがクッションになってくれたお陰でその身を叩きつけられる事態には至らなかった。一方で思わぬ参上に足を止めて気を取られてしまうダークロボットとダークゲムヲの背後に波動が迫る。
「危ない!」
思わず声を上げて体を起こす。
「、……え?」
一瞬にして展開された──薄青の防壁が波動を何の苦もなく防いで消滅させた。反射的に目を配るルーティだったがダークロボットもダークゲムヲも同じように唖然としている。
「わっ」
突如として現れた影にルーティは肩を跳ねた。
「待たせたな」
ダークリュカとダークネスである。先程の発言から察するに事態を聞きつけて急ぎ馳せ参じたといったところだろうか。
「この場は危険だ。奴らに気付かれている」
証明するかのようにヘリコプターのプロペラの音が上空をゆっくりと過ぎ去った。今にも着陸して精鋭部隊が駆けつけてくるかもしれない。
「テレポートを使ってここから移動する」
「で、でも、スピカとダークガノンドロフが」
「リーダー達なら心配はいらない」
ダークネスとダークリュカは人差し指と中指をこめかみにあてがって意識を集中させる。程なくして音もなくルーティ含むダークシャドウは空間転移を成功させた。後に残るのは風の音と揺らぐ木々の葉の群れの鳴き声だけ。
「、……」
地面から数センチ離れて浮遊しながら茂みの奥から現れたのはタブーである。標的の姿を探すように視線を配るが見当たらない。小さく息をついて人差し指で髪の毛を巻いて遊びながら。
「……つぎはにがさない」