第二章
全員の視線が集中する──その先にはウルフの姿があった。司令塔の内部まで送り届けた後も一切連絡を取り合わなかったお陰で救出に成功した話もそのお陰で"叛逆者"と取り上げられ全国的に指名手配されているなどといった話も全て一夜明けた今日この日目を覚まして初めて知ったことだったのである。
ルーティ不在の今。誰が今後のこちらの行動に指示を出すのか緊急会議を開いていたところ、驚くことにウルフ本人が立候補。数名は納得のいかなそうな顔をしていたが彼の場合はならず者集団スターウルフを纏め上げるリーダーでもありルーティのパートナーであるといった点を除いても大役を務めるには充分だった。
「煙草は吸わないでよ」
「吸わねえよ」
今この窓も開けられない状況で煙が室内に充満するのは避けたい。眉を寄せながら注意を促すカービィにウルフはポケットに手を突っ込んで扉に寄りかかりながら。
「……あいつに止められているからな」
普段鬱陶しそうにあしらっている様でも結局は気にかけているのだ。空虚をちらつかせる彼の横顔に思わず口を閉ざしてしまう。
「双子に何があったのか知らんが何より抑えておくべきは国の連中が裏で企ててた計画だろ。ルーティだけに任せておいていい話じゃない」
マリオが話を切り出す。
「そもそも──国が全国的に指名手配している状況で上手く動けるはずもないからな。バックアップが必要なのは確かだ。まっ、動きづらいってのは残念ながら俺たちも同じことだがな」
そう言って親指で窓を指して肩を竦める。自分たちが妙な行動を起こせば彼らは水を得た魚のように取り上げて囃し立てるだろう。
「活動自粛は免れられませんね」
マルスは頷いた。
「ルーティが今回の事態に単独で踏み入ったのだって巻き込みたくないという意味合いの他に注意が逸れている内に裏から手を回してくれというメッセージも含まれているかもしれない。尚更無下にするわけにはいかないよ」
さて。これだけ意見が飛び交っているにも関わらず肝心の仮のリーダーとやらはジャケットの内側から携帯を取り出して操作している。全く本当にチームを取り仕切るつもりはあるのか。フォックスは話し合いに参加しないウルフを横目に溜め息。こっちも先が思いやられるな……