第二章
夜の闇に紛れるようにエンジン音を殺して飛行する機影が二つ。未だ意識を取り戻す気配の見られない亜空軍の主将たる双子に不安に満ちた視線が注がれる中宣告された零の鐘が落ちる。
「で。どうするんスか?」
ダークフォックスが訊ねる。
「えっ……亜空間に戻らないの?」
「それは出来ない」
スピカはきっぱりと言い切った。
「どういう、」
「お前にも説明する」
片手を軽く挙げて命じる。
「高度を下げろ。地上に降りる」
天空大都市レイアーゼの都心部より若干離れた場所に位置する森林地帯。木々の隙間を抜けて機体を着陸させると程なくしてヘリコプターの音が上空を通り過ぎた。
「大忙しですね」
ダークファルコは他人事のように呟く。
「天空大都市と銘打ってるだけあって空は庭も同然らしいな。飛ぶだけ足が付く」
そう言ってスピカは羽根の上から飛び降りる。
「ど、何処に行くの」
「指名手配犯に宛てなんかあるかよ」
ひと呼吸置いて紡ぐ。
「俺も。お前も」
自覚はしていたけれど。
面と向かって言われると刺さるなあ……
「マルス。ロイ」
スピカが静かに呼び付けると地面に落ちた影が不自然に盛り上がって人の形を成した。ダークマルスとダークロイである。
「マスターとクレイジーを運べ」
「わ、分かりました……」
ダークマルスはともかくダークロイは気が進まない様子だった。彼らの際立った特徴といえば本物と性格や思考が真逆であるといった点だが果たして消極的とは如何なものか。
「ふふ……バチが当たりそうだよねぇ」
「僕もそう思っていました……」
ダークロイはクレイジーを抱きかかえながら。
「触れるのは……初めて、ですから……」