第二章



彼の声色に違和感のようなものを得た。思わず眉を寄せて問いを投げかける。

「何を考えているんだい」
「愚問ですね。見ての通りです」
「時間稼ぎのつもりなら得策ではないわね」

人数では圧倒的不利だが彼らの攻撃パターンは凡そ把握している。時間を掛ければ掛けるほど彼らは光による疲労で更に動きが鈍るだろう。

「ふふ」

ダークファルコは不敵な笑みをこぼして。

「仰るとおり。我々は所詮"影"」

両手を広げてみせる。


「──主役ではないのですよ」


言葉の意味を理解するより早く事態は急展開を見せる。ダークシャドウの乱入を前に司令官の命令によって火が放たれたのだ。鉄の杭に鎖で繋がれたマスターハンドとクレイジーハンドは逃れることができない。何やら叫んでいたようだったがこれまでの言動に苛立ちを蓄積させていたのであろう警備の男が頭に目掛けて警棒を順に力強く振り下ろすと双子は深く頭を垂れてそれきり動かなくなってしまった。

その一瞬気を取られたのが運の尽きか──双子軍師が魔導書を広げて詠唱を解き放つと地面に浮かび上がった魔方陣はより一層光を増した。伸びた鎖が脚を絡めて捕らえる。応戦していたロックマンは息を吐いた。これで彼らの戦力は警戒するまでもない程度に落ち着くだろう。

「隊長!」


そう。油断していたのだ。

仕掛けてくるのは『ダークシャドウ』だと。


「任せたぞ!」

ハッと目を開いて声の先を捉える。

「──ルー!」
 
 
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