第二章



「くっ」

呻いたのは──影の方である。振り上げた拳が顎を掠めると所謂化けの皮がみるみる内に剥がれてダークウルフが正体を露わにする。ロックマンが機械化した右腕を突き出して構えると背後にまだ残る砂塵からまたもルーティに化けた連中が飛び出した。唯の一度も通用していない手を飽きもせずに立派なことだ──即座に腕を交差させて防御の体勢に転じて拳を受ける。

「僕たちを見くびりすぎじゃないのかい」

マルス──基ダークマルスの剣を雷を落としたかのような形状の刀身であるサンダーソードで受け止めるのはマークだった。ダークマルスはその本人らしからぬ鳥肌の立つような不気味な笑みを浮かべると引いた剣を大きく振るう。

「……そうかなぁ?」

偽物とは一概に言っても彼らだって戦士であることに変わりはないのだ。重い一撃に僅かだが手の痺れを感じながら押し返す──かと思えばファルコ──基ダークファルコが振り向きざま回し蹴りを仕掛けてくるのだからたまらない。既の所で躱したがやはり数が多すぎる。光魔法という枷があるのだとしてもこの人数で迎え討とうなどやはり無理があったのではないか。

「おや。息があがっていますよ」

懐に潜り込まれる。ぎくりとして思わず奥歯を噛み締めたのも束の間目前が赤く眩く瞬いて。──咄嗟に魔法で簡易的な防壁を張らなかったとしたらどうなっていたか。相手を引き離す為とはいえ妹の策は一歩間違えれば命取り。それでも彼女にしてみれば悪に屈するよりマシだという話なのだろう。マークは大きく飛び退くとその妹ルフレの隣に並んで息をついた。

「──口を慎みなさい。焼き鳥にするわよ」
「君は巻き添えにするつもりかい」
「兄さんは死んでも避けるでしょう」

信用されているのだろうが、されすぎるというのも難儀な話だ。一方で火炎魔法を既の所で躱した様子のダークファルコはくっくっと笑う。

「ああ。怖いですねえ」
 
 
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