第二章
「──皆!」
次の瞬間だった。未来視によって何か捉えたのであろうシュルクが声を上げて振り向いたが刹那この最上階における唯一の扉が派手な爆風によって吹き飛ばされたのだ。いよいよ仕掛けてきたらしい敵軍に目の色を変えてロックマンも即座に青の装甲を纏う。ある者は銃をある者は剣をまたある者は魔導書を構える中──視界を遮る砂塵の奥で紅の眼光が浮かび上がる。
「ルフレ!」
「ええ!」
何の備えも無いというわけもなく。双子軍師が解き放つのは敵軍ダークシャドウの動力源たる影虫の動きを大幅に鈍らせる光魔法。地面には即座に金色の魔方陣が浮かび上がり眩い閃光を四方八方へと渡らせた。司令官を背に追いやり構える警備の男たちは眉を寄せて目を細める。
「構えろ!」
ロックマンが声を上げた。──砂塵を突き破り力強く踵を落とす。青の閃光を走らせて金色の髪が揺らぐ。小さく目を開いたが彼らの特質を思い出して直ぐさまエネルギー弾を見舞う。
「あれ」
少年を真似た影は正体を現して笑み。
「もうバレちゃったんスか?」
だが光魔法による効果は絶大であるのかダークフォックスは汗を垂れた。正体を現すや否や見下すかのような冷めきった眼差しに転じて回し蹴りとエネルギー弾を連続的に撃ち込む。とはいえ易々と攻撃を受けるはずもなくひらひらと躱して砂塵の中へ──入れ替わるようにまたもX部隊のリーダーたるルーティの姿を真似た次なる影がロックマンに襲いかかる。この現状は他の隊員も同じのようで撹乱を誘うべくX部隊の各メンバーの姿形を真似たダークシャドウが仕掛けてきているようだった。
「っは、──パックマン知ってるよ!」
攻撃を受け止めたが直後回し蹴りを見舞う。
「時間稼ぎのつもりだろ!」
「どうでしょうねぇ」
リンクの口調も真似て目を細めて笑っていたが瞼を開けば紅の眼光が見据える。
「なァんてな!」
一閃がパックマンの服の端を裂いた。剣を構え直してにやりと笑うその正体はダークリンクである。こうしてどの影も本物と同じ口調や癖を演じてくるのだから乱される。偽物だとは理解していたところで自分たちだってそれでも剣を突き立てられるほど非道に出来ていない。
少なくとも。一人以外は。