第二章
「マーク」
ロックマンは呟いた。
「神を殺めると──どうなると思う?」
突拍子もない質問に眉を顰める。
「急にどうしたんだい?」
「、いや」
困惑した様子で返すマークにロックマンはふいと視線を背けた。仮にも正義の側である自分が敵である彼らを気にかけるかのような発言──自分たちはただ上司からの命令に従って仕事を熟していればいいというだけの話なのに。
「正義は悪を罰しなければならない」
少しの間を置いてマークが答えた。
「けれど。彼らは"この世界"にとっては最も必要不可欠な均衡を保てる唯一の存在だ」
冷たい風が頬を撫ぜる。
「僕たちは彼らの企みを阻止するけど殺してはならない──こればかりは自他共に暗黙の了解であるはずだよ。そうじゃなきゃ本当の意味で彼らが命を失った時"この世界"が安全であるという保証がなくなってしまうからね」
ロックマンは静かに頷いた。
「そもそも彼らの場合はどんな致命傷を負ったところで回復の手段を残しているはずだけど」
「力を封じ込まれているのが現状だ」
「このまま本当に殺されてしまうかもしれないということかい?」
マークは人差し指の背を顎に当てながら。
「うーん、さすがにどうだろう。司令官だって何か考えはあるはずだよ」
そうだろうか。当然疑いたくはないのだが事に至った経緯も何も情報として受けていない以上いまいちピンとこない。かといって考えもなく正義の鉄槌を振り下ろすだけにしては違和感が残る。準備が整いすぎているのだ。
「まさか」
以降は口を噤んだ。──マスターハンドとクレイジーハンドに代わる神に等しい存在を。
既に……用意しているとでも……?