第二章
亜空軍の主将たる双子が捕らえられているのはレイアーゼ中央司令塔の最上階。対して、自分たちの現在位置は最上階より一つ手前の階層にある通路である。警備の連中は連絡が向くより先に残らず始末した──後は目の前にある扉を開いて飛び込んでいくだけなのだがそれがそう易々と上手くいくはずもあるまい。
特殊防衛部隊『X部隊』に次ぐレイアーゼ国の要──第四正義部隊『フォーエス部隊』。
ここに至るまで彼らの内誰一人として遭遇しなかった。この状況下で偶然すれ違っていたなど有り得ないだろう。地面に寝かせつけた警備の連中はその為の痕跡だというのに、騒ぐ様子も窺えないということは自分たちが仕掛けてくることを見越して最上階で待ち構えているものと考えてまず間違いはない。頭の回る連中ばかり揃えた部隊を相手に今考え無しに飛び込むのは自ら罠に掛けられにいくようなもの。
とはいえ。長く策を練っている時間もない──こうしている間にも彼の司令官が示した時刻は刻一刻と迫ってきているのだ。ここまできて、思考を巡らせている間に主将の首が落とされたなど笑い話にもならない。考える程に苛立ちと焦燥感に苛まれる。ダークシャドウが最も苦手とする光を仕掛けてくるのは明白。かといって彼らを囮として光の中であれ自由が利く自分が単騎で救出に向かうなどといった考えも彼らはお見通しの筈。残された希望は。
「リーダー」
その背で気配を感じ取って小さく息を吐いた。
「本当に」
ゆっくりと振り返って迎える。
「来たんだな」
彼の者を導いたダークミュウツーは相変わらず厭らしい笑みを口元に浮かべながら胸に抱いていたその人を解放する。視線が触れると途端に逸らしたくなってしまう衝動を瞼を瞑ることで逃れて今一度鋭くその人を見据える。