第二章
場面は変わって──黒染めの闇の中。
「おやおや」
地面に横たわる警備の男を踏みつけながらその青年は肩を竦めて笑う。
「相変わらず威勢のよろしいことで」
「笑い事じゃねえんだぞ」
ただの子供だと侮られても同然の小柄な少年は小さく溜め息を吐き出して薄く瞼を開く。
「……本当」
偽物集団『ダークシャドウ』。
特殊防衛部隊の隊員の姿形だけでなくその能力までも忠実にコピーした
スピカ・リー。
「何やってんだか」
建物内部にまで響いて聞こえる亜空軍の主将、破壊神クレイジーハンドの罵声を耳にぼそりと呟く。こっちは救出の計画を企てているというのに大人しく出るどころか挑発に乗るとは──我が上司ながら呆れて物も言えない。
「そぉっスかあ?」
ダークフォックスは拳銃の装填をしながら。
「自分は逆に安心したっスけど。芋虫みたいに這い蹲って泣いてるのとか見たくないし」
「なるほど。興味深いですね」
ダークファルコが妙に真面目くさった顔つきで人差し指の背を顎の下に添えると不穏な金具の音がした。やれやれと息を吐き出して、
「過激派ですねぇ」
そうして視線を向けた先には銃口を向けながら顔を顰めるダークウルフの姿。
「この状況で冗談が通じると思うな」
「はいはい……」