第二章
「じゃあ。連れていってあげる」
そう言うや否やダークミュウツーはルーティの手を掴むと引き寄せた。彼らの特質はその影を我が身の一部として使役することだが、何より優秀な能力を持つ戦士の忠実なコピーなのだ。彼もその限りではなくしかも未来を見通す目を持つ超能力者を写した影である。となれば彼がこうして引き寄せたのも悪戯などではなく。
「……!」
語るまでもなく変化は訪れる。足下から微弱の風が渦を巻くように、けれど次第に周辺の葉を巻き込んで激しさを増していく──ルーティはぱっと振り返った。最後まで見送るべくしてかその場から離れずにいるパートナーを見つめて瞳が揺らぐ。眉を顰めて口を開いた。
「……行ってきます!」
ばちん、と。
何かが弾けるような音がして。
ウルフは目を細める。静けさばかり残るそこに小さなパートナーの痕跡は見当たらない。
「……ああ」
聞こえるはずもない声で呟く。
「信じてるからな」
冷たい。風の音がする。
そっと瞼を開いて景色を捉えた。呼吸音。隣に視線を遣れば兄が無防備にも此方に体を預けて眠っている。小さく息をついて瞼を閉ざした。
全く。最悪の状況だ。
僕たちが人間に捕まるなんて。