第二章
ダークシャドウ──!
思わず声に出してしまいそうになったところを呑み込んだ。黒の髪を垂れて紅の灯を揺らす。ユウ・ブランに瓜二つの容姿を持つ彼の名前はダークミュウツー。指先を唇に触れながらじろじろもまるで舐め回すように頭の先から爪の先まで眺めてくるのだから落ち着かない。
「す、スピカは」
ルーティは腰が引けた姿勢で。
「心配してくれるんだぁ」
ダークミュウツーは笑みを深める。
「上だよ」
改めて最上階を見上げた。今現在交戦中であるかのような様子は肉眼では確認できないが──何れにせよ手早く駆けつけないことには。
「くふ」
手に汗握る少年に。
「ルーティ」
その人は語りかける。
「──私たちを裏切るのか?」
本物の彼とよく似た声で。
「考え直せ」
両肩を力強く掴んで瞳を覗き込む。
「今ならまだ間に合う」
、沈黙が訪れた。けれどそれも長く続くこともなくダークミュウツーはぱっと手を離すと。
「なぁんてね」
意地の悪い空気から解放する。
「動揺しないんだね?」
「今のユウはそんなこと言わない」
ルーティははっきりとした口調で返す。
「そう」
ダークミュウツーは目を細めた。