第二章
屋敷を囲う塀を跳び越えて駆ける。
「こっちだ」
「え?」
だがしかしウルフが招いたのは目的地とは全く見当違いの方向だった。
「ウルフ!」
「てめえはこのまま馬鹿正直にちんたら走って向かうつもりか?」
鼻で笑う。
「その短い足じゃ着く頃にはお陀仏だろうよ」
「確かに背は低いけどさぁ!」
木々を抜ける。
「……!」
そこにあったのは。
「奴さんも頭の回る連中を揃えている。空から仕掛ければ精鋭部隊サマに撃ち落とされるのがオチだ。が、地上ならどうだ?」
にやりと浮かべた笑みを深めながら月明かりに光沢の走る機体を手の甲で軽く叩いてみせる。程なく半端な雲が切れて全貌が明らかとなったその機体は見慣れた赤の戦闘機ではなく。
……まるで、狼のような。
「乗れ」
「え」
言うや否や彼自身は操作によって開いたハッチからコックピットに乗り込んだ。これがいつも見慣れた姿形なら迷わず羽根の上に登るのだが──単純に四足歩行の大きな生き物の上に跨るような感覚で構わないのか。あれこれ考えたが最終的に迷いを振り払って機体の上へ。
「振り落とされるなよ!」