第二章
急がないと──最も動きやすい服を手に取って手早く着替える。流石にそこでもたつくことはなかったがいざ部屋を出ようとドアノブに手を掛けてみれば話し声。聞き耳を立ててみると、どうやらピチカとリムが通路で話し込んでいるようなのだ。同室なのだから部屋に入ってから話せばいいというのに──このまま飛び出せば引き止められてしまうのは確実だ。
足音を立てないようにそっと扉から離れて今度窓に飛び付く。此方も音を立てないようにして開けば待ち構えていたように風が舞い込んだ。紺碧の夜空と真下には地面──二階とは一概に言っても建物の構造上アパートやマンションと異なり高さがある。それに加えてこの暗さでは高低差が掴みにくい躊躇っている時間は。
瞼を閉じる。大きく息を吸い込む。
今!
「……!」
勢い付けて窓の外へ飛び出した。着地点を探す間に重力に従って落下。速度を軽減させるべく雷を放てば誰かが異変に気付くことだろう。
ええい、受け身さえ取ってしまえば!
「!」
ぼすんと何かに受け止められた。
「ったく」
低い声が降り注ぐ。
「てめえも落ちるのが好きだな」
「……ウルフ!」
「デカい声を出すな」
程なく地面に下ろされる。
「キツネから話は聞いている」
「フォックスが」
月明かりにペンダントの光沢が走った。
「さっさと行くぞ」
「……うん!」