エピローグ



次の瞬間──キーラの手のひらの内側に光が灯り、懐炉のような温もりが宿った。元々ほんの少し地面から浮いていたが風も吹いていないのに衣服や髪が靡いたかと思うとキーラの体はふわりと持ち上がり浮遊して。その内に握られていた手が解放されたかと思うと更に浮かび上がった後キーラを囲うように緩く螺旋した四対の羽根が展開。見惚れるルーティを慈愛に満ちた聖母のような優しく柔らかな面持ちで見詰めながらキーラは手指を胸の前で組む。

「……不思議な子だ」

その呟きにルーティは目を丸くした。

「其の願いは決してお前達の為には成らない」

キーラの周囲を光が舞っている。

「事の顛末が伝われば人々はより強い興味と関心を惹くことだろう。其れは何れ信仰となり我々兄弟の糧となる。創造神と破壊神の監視下に在るとはいえ神力を取り戻せば其の存在は再び脅威に返り咲く」


紛れもない忠告だった。


撤回しろと話しているのではない。それでも願うというのであれば寧ろ好都合というもので悪巧みなど考えてはいないが余して困るものでもない。神力の使い道は自分達に限らず双神への貢献にも繋がる。

不思議、という比較的柔らかい言葉に留めたがその実見下していた。取り消してほしいと言うのなら叶えても構わないが先迄見越す脳はなかったか。


「……そうだね」

なんて思う自分こそ知恵遅れとは。

「でも、大丈夫だよ」

夢にも思わずに。


「だってそんなこと僕たちがさせると思う?」


どうして。

人間という生き物は。


「光で灼こうとしても闇に沈めようとしても」

憐れで脆弱で。

「僕たちは絶対にそれを止めてみせる」

不慥ふたしかで。

「それをさせないのが僕たち──戦士だから」


愚かなのだろう──


「お兄様」

ふわりと浮遊したダーズが寄り添った。

「おれも願っていい?」

四対の羽根それぞれに黒の触手が絡み付く。

「……叶えよう」

キーラはダーズの手を取った。

「其れがお前の願いなら」
 
 
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