エピローグ
今の話を纏めると。
願い事自体は"この世界"の主たるマスターとクレイジーが許容する範囲であれば何でも叶えることができる。だがしかし願いを叶えるにあたってキーラの体内を流れる生命の源たる光を使用する関係上、程度によっては大きく消費する形となる──
そうした場合にキーラの体にどういった変化が起こるのか聞くまでもないだろう。彼ら神様という種の生き物は死ぬことは有り得ずとも消耗した力を養うべく深い眠りにつく。それこそ人間が手指で数えるには足りない想像し得ない年月を。
「さぁ」
キーラは改めて繰り返す。
「願いを」
何を考えているのか分からないと思ったが実際何も考えてなどいないのだろう。彼は遠い昔に身勝手な理由で愛する弟と引き離された上に周囲に望まれるがまま古代兵器としてこの世界諸共、光で灼こうとしたのだ。世界を導く光であれ神様であれと願いを込められて感情すら己の抱く光に溶けて。
今は昔に麗しき双子おりき。
黄金の御髪は美しく。光に透き通る白磁の肌──
「……!」
幼少の頃の記憶がふと蘇る。
光は昇り。闇は堕ちて。
双子は二度と会ふことはあらざりし──
静謐な音色に乗せられたその歌の内容が切なかったのを未だ鮮明に覚えている。学びの一環で繰り返し聴いたがその都度子供心に可哀想だと憂いた程だ。
あの歌は。
彼等の経緯を歌ったものだったのだろう。
「……分かった」
嵐の前の静けさかのように辺りはいやに静まり返っていた。この世界を救済した少年が何を願うのかと誰もが口を噤み心待ちにしているかのようで。ただひとりキーラは変わらず聖母のような優しく温かな笑みを湛えながら言葉を待つ。
「……僕の願いは」
静寂を破るかの如く鳥が飛び立ち。
白い羽根が舞い上がれば少年は口を開いた。
「光の化身と混沌と闇の化身。双子の兄弟の始まりから終わりまでを綴った哀しい
ルーティはキーラの両手に包み込まれた片方の手を滑らせるようにして抜くとその上に重ねながら。
「幸せな結末を──世界に」