エピローグ
そんなことを言われても!
「えぇ……っとぉ、……」
ルーティは分かりやすく狼狽えた様子で冷や汗を垂れながら握られた手を振り払うなんて真似も出来ないまま視線を右往左往させた。──自分にこれといった欲求がないことが悔やまれる! 贅沢な悩みかもしれないが適当で済ませてはいけないことだけは分かる。時間と努力でどうにかなるものは論外だとして例えば、例えば……願い事を増やすとか?
でもそんな誰もが思い付きそうな願い事は有りなのだろうか。質問を投げかけてみたいが全てを見透かしたかのような彼の瞳に見据えられると質問さえも願いと承諾されてしまいそうで。ウルフはもう既に煙草を吹かせているしダーズは胸の前で両手を握りながら何を願うのだろうと心待ちにしている始末。
「……うぅん」
変に唸って引き延ばしを図りながら。
ちょっと待ってください、と止めて他のX部隊のメンバーに相談してみるのはどうだろう。でもそれはそれで僕も私も俺も、なんて大騒ぎになった挙げ句こうなったらトーナメントで優勝したらその権利をなんて話になって地獄耳のロックマンが聞き付けてそれならば我々もなんて展開に──駄目だ駄目だ!
というか勝手にそんなことしてもいいの? ふたりは良くてもマスターやクレイジーが知ったら怒られるんじゃ……そもそももし僕が亜空軍を解散させて本当の意味での平和な世界に、なんて願ったらそれすらも快く叶えてくれるつもりなんだろうか。
もはや一周回って揶揄ってる説ない? 僕が大声で願い事を伝えたら「ドッキリでした!」なんて看板掲げながら草むらから誰か出てきたりして。……
「お兄様」
不意にダーズが口を開けば、突き刺すような注目がようやく逸れたのでルーティは溜め息。
「どうやらこいつはお兄様が何処まで本気でお願い事を叶えてくれるものか勘繰っているようだよ?」
それを聞いたキーラが向き直るとそうだその通りだと言わんばかりにまるで赤べこのようにルーティは必死に頷いて意思表示をしてみせた。
「成る程」
それにしても彼は何を言っても聞かれても薄笑みを湛えていて今更ながら不気味さを感じる……
「私の此の願いを叶える力は体内に流れる液体より動力源として働く光を使用する」
キーラは変わらず手を離さないまま疑問に応じる。
「際限なく叶えてやりたいところではあるが途方もない願いであればあるほど比例して光を消費するが故限度はある。それと──例えばこの世界の規則や秩序、形や概念等まさしく禁忌に触れてしまう程の願い迄は私も聞き届けられない」
優しく微笑みかけながら。
「私も弟も彼らの監視対象に或る。どうか創造神と破壊神の目の届かない良心的な範囲で頼むよ」